小児ネフローゼ

運動に制限が必要なときはどんな時?

tanijima

1 基本的には運動も制限は不要

たにまる
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こんにちは。たにまるです。

今日もお会いできてうれしいです。

今回は、ネフローゼについての正しい知識を得るために、

日常生活における運動についてお伝えしたいと思います。

この記事では、以下の本の部分を参考にしながら、考え方をご紹介していきます。

伊藤秀一編『新 子どもの腎炎・ネフローゼ』(2018年・東京医学社)のうち、「第5章 これで安心 日常生活」の「はじめに」「Ⅱ 運動」の箇所

後藤芳充編著『こどもの腎臓病と治療』(2018年・メディカ出版)のうち「第9章 腎臓病とうまくつきあう」の「①腎臓病をもつとどんな生活になるの?」「③運動制限はどんな時に必要?」の箇所

前回は食事についてお伝えしましたが、運動も考え方は基本的には似ています。

再発中は激しい運動は避けるのみで、普通の生活は可能ですし、

寛解している場合は、まったく運動制限はありません。

今回の記事では、どんなときに運動制限が必要で、逆になぜ基本的に運動制限が必要がないのかについて、お伝えできればと思います。

2 運動制限が必要な場合の考え方

2−1 再発時には激しい運動は控えるが、通常の生活は可能

ネフローゼ症候群が再発している場合には、激しい運動は控える方が良いとされています。

ただし、再発中でも普通の生活を送ることは可能です。

再発中は、血管内の水分量が少なくなったり浮腫が悪化したりすることがあるので、激しい運動は控える方が良いと思います。ただし、ベッド上安静の必要はなく、授業を受けるなど通常の生活は可能です

『新 子どもの腎炎・ネフローゼ』p133
たにまる
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常にベッドの上で安静にする必要はないんだね!

2−2 寛解時には運動制限はなく、むしろ運動は推奨される

ネフローゼ症候群が寛解しているとき、つまりたんぱく尿が出ていない時には、まったく運動制限はありません

ステロイドを内服しているときでも、運動は開始して構わないとされています。

むしろステロイド薬の副作用を予防する意味でも適度な運動は重要です。

また本の中ではむしろ運動しないことによる悪影響について説明があります。

私たちは、他院で長期間のベッド上安静を強いられ、高度の肥満や脊椎圧迫骨折などで動けなくなり、当院へ紹介されてきたネフローゼ症候群の患者さんを何度も目の当たりにしてきました。ステロイド内服中は、骨密度を維持して骨粗鬆症を予防するためにも、むしろ適度な運動をさせることが大切です。

『新 子どもの腎炎・ネフローゼ』p133

低たんぱく血症のため、むくんで体重が増加しからだが重くなります。無理に運動をする必要はないですが、適度にからだを動かさないと、足の静脈に血栓(血のかたまり)ができ、つまってしまうことがあります(静脈血栓症)。

『こどもの腎臓病と治療』p87

もちろん運動は無理にする必要はありませんが

適切なタイミングで、適度に運動をすることが大切なようです。

たにまる
たにまる

むしろ運動はいい効果があるんだね!

3 運動制限ではなく、普通の子どもと同じ生活を

その昔、腎臓病が不治の病と考えられたときには、安静が必要とされていたそうです。

そのイメージを今でも持っている人は多いかと思います。

ですが、以下の理由から運動制限は再発の場合などをのぞいて必要ないとされました。

①運動が症状を悪化させる根拠になる研究論文がないこと

②治療が進歩していること

『こどもの腎臓病と治療』にはこんなことも書かれています。

小児腎臓病学会の評議員の先生に、「腎臓病のこどもたちに安静をどうしているか?」というアンケートをしたところ、一番多かった回答は「できるだけ安静をしない」というものでした

『こどもの腎臓病と治療』p81

むしろ過度な日常生活の制限することは、病気によるコンプレックスを生じさせたり、こどもたちの発達を妨げることになるといいます。

むしろ、長期入院、生活制限、両親の過保護、学校生活での運動制限などは、心理発達や社会性の発達の遅れを生みます。運動したり遊んだりしたい盛りの子どもたちに、安静を強いたり長期入院をさせたりすることの精神面に与える弊害は明らかです。将来腎臓病が治ったとしても、自分は無理ができないという気持ちを成人になってからも持ち続けるため、社会生活に影響が出ることが考えられます。(略)病状が落ち着いていたら、できるだけ普通の子どもと同じように体育や行事には参加させましょう。

『新 子どもの腎炎・ネフローゼ』p133

このように過度な運動制限をすること自体が、子どもたちによくない影響を与えることがあります。

たにまる
たにまる

普通の子と同じような生活を送ることが大事なんだね!

4 おわりに

今回の記事では、ネフローゼの子どもたちの運動についてお伝えしました。

・運動制限が必要な場合ってなんだろう?

・安静にさせないといけないんだろうか?

・運動制限することのデメリットってなに?

などについては、また本で確認いただければと思います。

最後に前回もご紹介した『新 子どもの腎炎・ネフローゼ』の一部をご紹介して記事を終えたいと思います。

現在、小児腎臓病の専門医は「科学的根拠のない制限は行わない」という考え方を大切にしています。日本小児腎臓病学会でも、腎臓病や学校検尿で異常が発見された子どもたちなどの管理について、以前と比較して運動制限を大幅に緩める指導をしています。その結果、現在は腎臓病の子どもであっても、普通の子どもと大きな差がない生活が可能となっています。

『新 子どもの腎炎・ネフローゼ』p9
たにまる
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今日も読んでくれて、ありがとうございました!

ABOUT ME
たにまる
たにまる
3歳から難病を発症。その後何度も入退院を繰り返しながら大学院まで修了。 学生時代に出会った学習障害の男の子との出会いをきっかけに療育や不登校指導、外国籍生徒指導など特殊指導を専門に従事
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